3.11市民ネット深谷のブログ

脱原発をメインにメンバーが気の向くまま書きます。

9.1さよなら原発講演会

サブタイトル「つながろうフクシマ!くりかえすな原発震災」と題した講演会が、9月1日(日)日比谷公会堂で開催されました。主催者は、内橋克人大江健三郎、落合恵子、鎌田慧坂本龍一澤地久枝瀬戸内寂聴辻井喬鶴見俊輔の9名の知識人が立ち上げた「さよなら原発」一千万人署名 市民の会です。

私は女房と子どもの3名で参加しました。12時30分くらいには入れたのですが、既に一階席は満員状態で、迷わず2階席に行くと前の方に座ることが出来ました。周りを見るとほとんどが高齢者です。主催者側にもっと若い有名人を据えれば違うのかなと思ったりしましたが、これも現実です。ともあれ定員2,000名のところ2,050名の入場だったそうです。

予定通り13時開演、司会の木内みどりさんが白いTシャツに黒いパンツスタイルで登場。さすが女優さんです。滑舌がよく聞き取りやすく司会にはピッタリと思いました。以下、私の心に残った部分を登壇順に記述します。内容は、思いっきり私の独断です。発言の趣旨から離れているものがあるかも知れませんがお許しください。

開会挨拶 鎌田慧さん。
9月1日が防災の日であることから、90年前、関東大震災の時に戒厳令がしかれ、大杉栄伊藤野枝そして7歳の甥が憲兵隊本部で虐殺されたこと、下町では、社会主義の労働者が十数人殺されたこと、在日朝鮮人の方が、中国人も含んで六千人も虐殺されたことを取りあげ、軍隊があって、震災があって、それに対する弾圧がはじまり、日本が戦争に向かっていった。過去の経験から現安倍政権の危険性について警鐘を鳴らしましまた。

また、福島の災害は、止めようもなく汚染水を海外にまで運んでいる。海も汚染され、山や川などの自然も汚染されて除染作業などできるような状態ではない。そういうことを十分知りながら、さらに再稼働を進めようとしている。あるいは海外に輸出しようとしている。脱原発運動は命を守る運動である。こういう人民の意思をまったく無視するような政権に対して、わたしたちは力を尽くして抵抗していくのが、これからの時代を担っていく役割だと思う。

オープニングライブ ジンタらムータ
(チンドン)ジンタをバックボーンとしたグループで、彼らの演奏を初めて聞きました。リーダーの大熊ワタルさんが説明を加えながらの演奏だったので、助かりました。最初は、奴隷制度にかかわりそれへの懺悔から生まれた「アメージング・グレース」です。聞き慣れたフレーズが会場に流れます。次に「平和に生きる権利」、チリのビクトル・ハラの曲で、米CIAが糸を引いた軍事クーデターでアジェンデ政権が崩壊し、彼も殺されたそうです。憂いを帯びた切ない曲です。次に、同じくラテンアメリカのプロテクトソング「団結した人民は負けない;不屈の民」、途中、曲にあわせて「子どもを守れ!未来を守れ!地球を守れ!海を汚すな!だから再稼働反対!」とコールしました。そして相馬盆歌と続きます。このグループの演奏を聴けただけでも満足という感じでした。司会の木内さんも感激したようで、最初からこんなに盛り上がっちゃってと言ってもっと後の方が良かったと、口を滑らすほどでした。

発言 佐藤和良さん(いわき市議会議員)
ジンタらムータのあとで大丈夫かなと心配しましたが、まったく負けてなく聴衆を見据え一言一句、腹に座った言い方で自分の思いをぶつけます。福島では、今なお15万人を超す人々が故郷を追われ、自らの家を追われ、生業を追われ、家族を分断され、地域コミュニティーも破壊されている。ある仮設住宅をまわった心理療法士が、ほとんどの方々が抑うつ状態だと言った。福島県内での原発関連死は1,400人を超えている。汚染水問題は2年4ヵ月も認めなかった。参議院選が終わった翌日垂れ流しを認めた。彼らによれば、それまでは汚染水は出てなかったということだ。

そして「原発事故被害者の救済を求める会」と福島原発告訴団50人の陳述書「これでも罪を問えないのですか」を紹介し、「私たち被害者は絶対に諦めません、諦めてなるものか」と力強く発言しました。

講演 大江健三郎さん
司会の木内さんが日本の宝と紹介しました。ご本人はそんなこと思ってないでしょうが、この際「ノーベル賞作家」という知名度、肩書きを徹底的に使ってもらいたいと思います。大江さんは、いとうせいこうさんを大変すぐれた作家として紹介し、彼の「想像ラジオ」が芥川賞を落選したことを、当然選評には好意的なものあるわけですが、批判的な中に、死者を冒涜している、あるいは古くさいヒューマニズムに立つセンチメンタルな作品というものがあったとして、文学とはどうあるべきか説いていきます。

大江さんは主人公が津波で流され、杉の木のてっぺんに引っかかったまま、仰向きでディスクジョッキーとして、多くの被害者(死者)の声を拾い上げ届ける設定やDJアークの使う言葉など、すぐれて文学的であると言います。大江さん自身も、震災の時には既に亡くなっていた、井上ひさしさんと加藤周一さんに寄り添って生きているとして、井上さんとの思い出を語りました。

若い頃2人で地方に講演会があり出かけた。井上さんは拍手喝采でうけたが、自分はまったく駄目だった。旅館に入ると、女将が色紙を2枚持参して、自分でなく井上さんに2枚書いてほしいと言うことだった。井上さんは1枚の色紙に、「難しいこと易しく、易しいことを深く、深いことをおもしろく」と書いて、他の1枚を私に渡した。私は「易しいことを難しく、深くもなく、おもしろくもなく、ただ長いだけ」と書いた。(場内爆笑)

加藤さんに関連しては、すぐれたフランス語の使い手であったことから、昨年ブックフェアでフランスに行った時、生中継されている公開討論?で反核の話をした。原発推進者らしい司会者が、大江さんのフランス語が下手なこととその内容の酷さを視聴者に侘びた。しかし客席にいた一群の中高年の女性たちが、いわば熱烈に賛同を示した。司会者はそれが奇妙に思えたらしい。というエピソードから、反核・反原発(大江さんは脱とは言いません)は、エッセンシャル・モラルなんだと。未来を生きる子どもたちに対して、3.11後を生きる私たちが取るべき態度は、人間のもっとも基本的なモラルは、反核、反原発なのだと言うことです。

大江さんのメリハリのない分かり難い話を、会場では聞き漏らすまいとして、皆さん集中してます。その空気が、張りつめたようにビシビシと伝わります。最後に自分は絶望していない。フランスでもそうだったが、中高年の女性たちがきっと変革ををもたらすと確信していると。

コント ザ・ニュースペーパー
短い休憩を挟んで司会者が、次は安倍首相と紹介します。安倍首相と小泉元首相の演説と掛け合いという形で世相を風刺していきます。特に小泉さんの物まねが上手くて感心してしまいます。「皆さん、大飯原発で稼働中の2基が止まり稼働原発はゼロになります。」(拍手)「しかしこれは皆さんの力ではありません。ただの定期点検ですから」(爆笑)

講演 小出裕章さん
小出さんは例によって大写しにされたパワーポイントを使い話を進めます。お題は「福島のことはすべてに繋がっている」で、いつのもトーンで、フクイチの写真やそこから放出された放射能が政府の公式見解でも広島原爆の168倍であり、当事者は少なく見積もるのが普通だから、実際は300倍から400倍の放射能が放出されているだろう、というところから入りました。小出先生で印象に残ったことを箇条書きにします。

1.福島のことはすべてに繋がっている。
2.3.11から汚染水は流出し続けている。
3.福島の人たちが故郷を追われ、生活もコミュニティーも破壊され流浪してしまう。こんなこ とは戦争でも起きない。国がなくなっても大地があれば人々は生きられる。福島の避難区域の 人たちは生きることすら出来ない。
4.原子力を推進する人たちを原子力ムラと言うがそんなものではない。IAEAを含めて彼ら の実態は原子力マフィアである。
5.日本は今まで58基の原子力発電所が建てられた。自民党政権はすべて安全であるとして建 てたのだ。現在は安全を確認したとして再稼働しようとしている。正気の沙汰ではないが、今 度は海外へ輸出しようとしている。
6.目的は、福島の事故を忘れさせることにある。ならば、私たちに必要なことは福島を忘れな いこと。
7.原発の問題は単に安全か危険かということではない。日本が原子力をやろうとした動機は核 開発である。
8.電子力発電所とかロケット開発の背景には、核弾道ミサイルへの転用がある。
9.核兵器開発の技術は、①ウランの濃縮、②原子炉、③再処理だが、常任理事国以外でその技 術を持っているのは日本だけ。
10.原子力は他者の犠牲の上にしか成り立たない。

途中、日比谷公会堂ということもあり、浅沼稲二郎刺殺事件の映像を流したり、日本国憲法に触れながら、原子力がもたらす構造をあぶり出します。そして、原子力を選択すると言うことは、何の決定権も持たない子どもたち、未来の子どもたちに毒物だけを押しつけるということになる。未来犯罪を犯しているのだと熱く語りました。

呼びかけ人挨拶 澤地久枝さん
少し歩くのが不自由かなと思われましたが、介添えは断り一人で登壇して、ユーモアを交えながら、今年の夏も停電は起きなかった。停電が起きると脅かしてきた人たちが知らん顔をしている。誰が停電すると言っていたか確認すべきである。私は、福島、東北そして日本列島の漁業は失われたと思っている。子どもたちの命を守るため、ハッキリと態度表明して、反動的なことをやろうとしている人たちにとって、無視できない実効性持つ方向に進んでいこう。

呼びかけ人挨拶 内橋克人さん
長くなってきたのではしょります。内橋さんの主張は、新しい安全神話が作られようとしている。私たちは締めてかからなくてはならない。

閉会の挨拶 落合恵子さん
落合さんはトレードマークのライオンヘアーで力強く訴えます。ここにいれば心地よい。同じ思いを抱いている私たちが頷くのは簡単だ。でも各地を歩いていると、「知らない」という人が大勢いる。今でも「電気代が高くなったらどうするの」、「日本の経済が破綻してしまう」と言う人がいる。私たちは、始めの一歩から声をかけ、声をあげていくしかない。ここに来ない人たちにこそ、声をあげ続けたい。ノックし続けたい。「諦めないぞ」と自分に言いたい。絶望はしない、1ミリでも前に進む。おかしいことには、おかしいと声をあげていく。あまりにも長い間「安心安全神話」を流し続けた人たちに対する、せめてもの、人間としての復讐である。お願いです。外に行ってまったく違う考えの人たちをノックし続けてください。
(今仁@3.11市民ネット深谷)